No.54 世界遺産はなぜ「開発」で失われるのか

危機遺産特集
――都市再開発と文化の衝突――

今朝、小鹿がぽつりと聞いた。

「壊したくて壊すわけちゃうのに、なくなるん?」

その問いの先にあるのが、都市開発による危機です。

世界遺産は「保存」が前提ですが、同時に多くは“今も人が暮らす場所”です。
道路、橋、再開発、観光施設。
生活の利便性向上と文化保存は、ときに衝突します。


■ ドレスデン・エルベ渓谷(ドイツ)

登録:2004年
取消:2009年

登録基準(ⅱ)(ⅳ)
バロック都市景観とエルベ川流域の調和が評価されました。

しかし交通渋滞解消のための橋建設計画が進行。
ユネスコは景観への重大な影響を懸念し、2006年に危機遺産へ登録。

最終的に住民投票で建設は承認。
2009年、世界遺産登録は取り消されました。

ここで問われたのは、

文化的景観か、生活インフラか。


■ リバプール海商都市(イギリス)

登録:2004年
取消:2021年

19世紀の海洋都市景観が評価されましたが、
大規模ウォーターフロント再開発により、歴史的景観の完全性が失われたと判断。

都市の経済再生と歴史保存。

これは単純な善悪ではありません。


■ なぜ開発は繰り返されるのか

  1. 経済成長の優先
  2. 住民生活の利便性
  3. 政治的判断

世界遺産は「人類共通の財産」ですが、
土地の所有権と行政権限は国家にあります。

ユネスコは勧告はできても、強制はできません。


■ 本質的な問題

世界遺産は“過去”を守る制度。
都市開発は“未来”を作る行為。

両者は時間軸が違うのです。

小鹿が言いました。

「便利と大事、どっちが未来なん?」

簡単な答えはありません。

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