No.45 ルンビニ(ネパール)

世界遺産絶景物語
――すべてが始まった、静かな場所へ――

今朝、庭に来た小鹿が、足元の草をじっと見つめていました。
「はじまりの場所、行こ」
そんな声が聞こえた気がして向かったのが、ネパール南部にあるルンビニです。

ルンビニは、お釈迦さま(釈迦=ゴータマ・シッダールタ)が誕生したと伝えられる聖地。
紀元前6世紀頃、この地で一人の王子が生まれ、その後仏教という思想が世界へ広がっていきました。

現在のルンビニには、誕生地とされる「マーヤー・デーヴィー寺院」と聖なる池が残されています。
派手な装飾や巨大な建築はありません。
しかし、世界宗教の一つが始まった場所という事実は、静かな重みを持っています。


■ 世界遺産としての価値

ルンビニは1997年にユネスコ世界遺産(文化遺産)に登録されました。

登録理由は主に、

  • 人類の精神史に大きな影響を与えた人物の誕生地であること
  • 2000年以上にわたり巡礼が続いていること
  • 考古学的遺構が確認されていること

にあります。

特に注目すべきは、紀元前3世紀にインドのアショーカ王が建立した石柱。
そこには「ここが仏陀の生誕地である」と刻まれており、歴史的裏付けの重要な証拠とされています。


■ なぜこの場所が守られてきたのか

ルンビニは長い間、忘れられた場所でもありました。
19世紀後半に再発見されるまで、正確な位置は失われていたのです。

それでも巡礼の記録や伝承は消えませんでした。

宗教的な意味だけでなく、
「人がよりよく生きるとは何か」という問いを生んだ思想の出発点として、
この場所は世界的価値を持ちます。


■ 現在のルンビニ

現在は国際仏教ゾーンが整備され、
各国が建立した寺院が並んでいます。
日本、タイ、ドイツ、中国…
仏教を通じてつながった国々の建築様式が集まる姿は、
まるで思想の地図のようです。

訪問難易度は★★☆☆☆。
ネパールの主要都市からアクセス可能で、
比較的平坦な園内は静かに歩いて回れます。

庭に来る鹿は、ただ草を食べているだけです。
でも、その命もまた「始まり」から続いています。

ルンビニは、声高に語る場所ではありません。
けれど、世界の精神史の原点が、確かにそこにあります。

小鹿の次の指示は、
「祈りが広がった場所」

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